怪我と予防 2026-09-14

アメフト部の夏合宿と熱中症対策|WBGT指数と応急処置の基本

関東TOP8・BIG8の秋季リーグ戦は例年8月下旬に開幕しますが、その直前の7月から8月にかけて、多くのチームが夏季オフの期間を使って強化合宿を行います。気温・湿度がもっとも高くなる時期と、シーズン本番に向けて練習量が増える時期が重なるため、熱中症のリスクが1年で最も高まる場面のひとつです。「暑い時期の練習は危ない」と漠然と分かっていても、具体的にどの指標を見て、どう判断すればよいのかまでは知らない、という方も多いのではないでしょうか。この記事では、環境省・公益財団法人日本スポーツ協会が公表しているWBGT(暑さ指数)の運動指針と、公益社団法人日本アメリカンフットボール協会(JAFA)が示すアメフト特有の注意点・応急処置の考え方を、一次情報にもとづいて整理します。

なぜアメフトの夏合宿は熱中症リスクが高いのか

アメフトは他の多くの競技と比べて、練習中に防具(ヘルメット・ショルダーパッド等)を着用し続ける時間が長いという特徴があります。JAFA(日本アメリカンフットボール協会)も、防具を着用してプレーする競技として「より注意が必要」と説明しています。防具は身体を熱がこもりやすい状態にするため、同じ気温・湿度の条件でも、防具を着けない運動と比べて体内に熱がたまりやすくなると考えられます。

さらに夏合宿の時期は、多くのチームで練習時間・練習強度が増える時期とも重なります。日本スポーツ協会の資料でも、合宿の初日など、それまでより急に運動量が増えるタイミングで熱中症が発生しやすい傾向が指摘されています。身体が暑さに慣れる「暑熱順化」には個人差がありますが、一定の期間がかかるとされているため、合宿の立ち上がり数日間は特に注意が必要な時期といえます。

WBGT(暑さ指数)と運動指針を確認する

環境省・日本スポーツ協会は、気温だけでなく湿度・輻射熱もあわせて評価する「WBGT(暑さ指数)」を基準にした運動指針を公表しています。5段階の目安は次のとおりです(環境省「熱中症予防情報サイト」より)。

WBGT段階目安となる対応
21未満ほぼ安全通常は熱中症の危険は小さいが、適宜水分・塩分補給
21以上25未満注意運動中に積極的に水分・塩分を補給し、兆候に注意
25以上28未満警戒積極的に休憩を取り、激しい運動では30分おき程度に休憩
28以上31未満厳重警戒激しい運動や持久系メニューは避け、10〜20分おきに休憩
31以上運動は原則中止特別な場合を除き運動を中止

WBGTは気温そのものとは異なる指標で、湿度が高い日は気温がそれほど高くなくても数値が上がることがあります。合宿地・練習場所の実測値、または環境省の熱中症予防情報サイトで確認できる地点別の値を、練習開始前・休憩ごとに確認する運用にしているチームもあります。日本スポーツ協会は「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」でこの指針を詳しく解説しているため、チームの安全管理担当者・トレーナーは一度目を通しておくと判断の助けになります。

JAFAが示す症状の見分け方と応急処置の考え方

JAFAが公開している情報によると、熱中症は症状の程度によって「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」の4つに分類され、このうち体温調節が破綻し体温が40度以上に上昇する「熱射病」がもっとも危険とされています。

意識障害がある、呼びかけへの反応が鈍い、体温が異常に高いといった兆候が見られる場合は、ためらわずに救急要請を行い、涼しい場所へ移動させて身体冷却を始めることが基本とされています。一方、意識がはっきりしている場合は、涼しい場所に移動して防具や衣服を脱がせ、スポーツドリンクなどで水分と塩分を補給する、という流れが案内されています。

ここで重要なのは、判断に迷う場面では自己判断で様子を見続けず、チームのトレーナー・チームドクター・現場の指導者にすぐ相談する、あるいは救急要請するという選択肢を早めに取ることです。症状の進行は個人差が大きく、この記事の内容だけで診断や応急処置の全てを判断できるものではないため、詳しい手順は必ずJAFA公式サイトの一次情報や、所属チームの医療スタッフの指示を確認するようにしてください。

水分・塩分補給と体重管理の目安

水分補給については、運動前からの計画的な摂取が有効とされています。JAFAの情報では、汗で失われる塩分を補うため、0.1〜0.2%程度の塩分を含む飲料での補給が案内されています。また、運動による体重減少が、練習前の体重の2%を超えないように管理することが目安として示されています。合宿中に練習前後で体重を記録し、減少幅を確認する運用を取り入れているチームもあります。

このほか、冷感タオルなどによる身体冷却も、外部から皮膚温を下げる方法として一般的に紹介されています。合宿の持ち物リストに、通常の水分補給用ボトルに加えて塩分補給できる飲料・タブレット、冷却用タオルを加えておくと、現場での対応がしやすくなります。

合宿前後で意識しておきたいこと

暑熱順化には一定の期間がかかるとされているため、合宿の初日からいきなり通常シーズン並みの強度で練習するのではなく、最初の数日は運動量を抑えめにし、段階的に強度を上げていく組み立てが安全管理の面では望ましいとされています。この点は日本スポーツ協会の資料でも、急に暑い環境で運動量を増やすことのリスクとして触れられています。

また、個人の体調管理だけでなく、チーム全体での情報共有も重要です。前日の睡眠時間や体調に不安がある部員が申告しやすい雰囲気を作っておく、休憩時間・給水タイミングをあらかじめ決めておく、WBGTの実測値を毎回記録しておく、といった運用面の工夫は、多くのスポーツ現場で推奨されている考え方です。

関東TOP8・BIG8の今シーズンの日程を確認する

夏合宿の時期は、春季オープン戦の終了から秋季リーグ戦の開幕までの間に位置しています。シーズン全体の流れは関東大学アメフトの1年間|春季オープン戦から甲子園ボウルまでの流れで解説していますので、あわせて確認してみてください。今シーズンの対戦カード・開幕日は下記の日程ページで随時更新しています。

まとめ

アメフトの夏合宿は、防具を着用した練習が長時間続くことと、気温・湿度が高い時期・練習強度が増える時期が重なることから、熱中症のリスクが年間で特に高まる場面です。環境省・日本スポーツ協会が公表するWBGT運動指針で「今の環境がどの段階にあるか」を確認しつつ、JAFAが示す症状の見分け方・水分と塩分の補給目安・体重管理を、チーム全体の運用に落とし込んでおくことが基本になります。判断に迷う場面では自己判断に頼らず、チームの医療スタッフへの相談や救急要請を早めに選択することが大切です。

参考リンク

本記事は環境省・公益財団法人日本スポーツ協会・公益社団法人日本アメリカンフットボール協会(JAFA)が公表している一次情報をもとに編集部が構成した一般的な解説です。症状の判断・応急処置・練習強度の調整は個人差・現場の状況によって異なるため、実際の対応はチームの医療スタッフ・指導者の指示、および上記各団体の最新の公式情報を必ず確認してください。

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