トレーニング 2026-10-21
アメフト 減量・オフシーズンの食事管理|大学生向けの進め方と注意点
「体重を落としたほうがいいと言われたが、何から始めればよいかわからない」「減量したら練習で力が出なくなった」「オフシーズンに食べすぎてしまった」。アメフトの部員は、増量の話題を聞く機会が多い一方で、減量や体重の戻し方については自己流になりやすいのではないでしょうか。
この記事では、国立スポーツ科学センター(JISS)が公開している「ウエイトコントロールガイドブック」と、秋田県スポーツ科学センターのスポーツコラムをもとに、オフシーズンの減量と食事管理の考え方を整理します。先にお断りしておくと、JISSのガイドブックはレスリングや柔道などの体重階級制競技の選手を主な対象としたものです。アメフトには体重階級がありませんが、減量計画の立て方・ペース・食事の基本・危険な方法の見分け方は共通して参考にできる部分があるため、その範囲で引用します。減量が自分に必要かどうか、必要ならどの程度かは、体格やポジション、チームの方針によって変わります。最終的にはトレーナーや公認スポーツ栄養士・管理栄養士に相談して決めてください。
減量の前に確認したい「そもそも必要か」
秋田県スポーツ科学センターのスポーツコラム(令和8年度第1号)は、競技特性やポジションに応じて、パフォーマンス向上のためにウエイトコントロール(増量や減量)が必要となる場合があるとしたうえで、ウエイトコントロールが本当に必要なのかを自己判断せず、指導者や公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士に相談して行うことも大切だと述べています。また、短期間で体重だけを増減させる無理な方法は、パフォーマンスや健康に悪影響を及ぼすため、正しい方法で行う必要があるとされています。
つまり最初の一歩は、食事を減らすことではなく、現在の体重と体組成を把握し、指導者と目的を共有することです。「周りが絞っているから自分も」という理由で始めるのは避けたほうがよいと考えられます。
基本は「エネルギーバランス」
JISSのガイドブックは、ウエイトコントロールの基本はエネルギー(カロリー)のバランスだと説明しています。摂取エネルギーと消費エネルギーが釣り合っていれば体重は維持され、摂取が消費より少なければ体重は減少します。減量は、食事量を減らすか、運動量を増やすか、またはその両方で行うことになります。
ただし、同じガイドブックは「体脂肪を減らしたいのか、体重だけを落としたいのか」で結果が大きく変わることも示しています。体重の中身は水分、たんぱく質、脂質などで構成されており、一般的な体組成計では体脂肪量と除脂肪量の2つに分けて考えます。アメフトのパフォーマンスにとって重要な筋肉は除脂肪量に含まれますので、減らしたいのは体脂肪で、筋肉や水分ではない、という整理になります。
ゆっくり減量と急速減量の違い
JISSのガイドブックは、1週間から数日で体重の5%以上を落とすことを「急速減量」と呼び、減少する体重のほとんどは体水分だと説明しています。このため、脱水による体調不良やパフォーマンスの低下が起こるとされています。一方、1週間に0.5〜1kgの減量を目標に徐々に落とす方法は「ゆっくり減量」と呼ばれます。
| 項目 | ゆっくり減量 | 急速減量 |
|---|---|---|
| 目安 | 1週間に0.5〜1kgの減量を目標に徐々に落とす | 1週間から数日で体重の5%以上 |
| 減る中身 | 体脂肪が中心になりやすい | 減る体重の約70%は体水分と説明されている |
| 主なリスク | 計画通りに進まない場合の見直しが必要 | 脱水、免疫力の低下、筋肉量・筋グリコーゲンの減少 |
ガイドブックに紹介されている研究では、同じ減量幅でもゆっくり減量のほうが体脂肪の減少が多く、除脂肪量の減少が少なかったとされています。体重の変化は日々の練習や食事、排便状況などで上下するため、毎日の数値に一喜一憂せず、おおよそ1週間ごとに体重・除脂肪量・体脂肪量の変化を評価するよう勧められています。
アメフトには試合直前に体重を合わせる計量がありません。試合に向けて体重を急に落とす必要がある場面は基本的にないはずですから、減量を考えるなら、時間に余裕のあるオフシーズンに、ゆっくり進めるのが筋が通っていると考えられます。
減量はいつ行うか:シーズンの流れから逆算する
JISSのガイドブックは、トレーニングの期分けに合わせて体重管理の目標も変わるとしています。準備期(オフシーズン)は基本的な身体づくりの時期で、除脂肪量の増加や体脂肪量の減量が目標にあげられています。試合期(インシーズン)は、技術練習が増えるため、基本的な身体づくりをオフシーズンに済ませ、プレシーズンからインシーズンはそれを維持して競技の動きにつなげていくのが理想的だとしています。
関東学生アメフトでは、2026年のTOP8は8月27日にアミノバイタルフィールドで開幕し、最終節は11月14日・15日と、KCFAが発表しています(KCFA|1部リーグTOP8は8月27日(木)に開幕)。リーグ戦の最中に食事を大きく削ると、練習の質や回復に影響が出るおそれがあります。シーズンの全体像はアメフトのシーズンカレンダーにまとめています。体づくりの計画は、日程から逆算して立てるのが現実的です。
実際の日程はTOP8 日程・結果、BIG8 日程・結果で確認できます。チームごとの情報はTOP8 チーム一覧、BIG8 チーム一覧、順位の推移はTOP8 順位表で見られます。
ゆっくり減量のペースとエネルギーの考え方
JISSのガイドブックは、体脂肪を減らすゆっくり減量では、1週間に0.5〜1%のペースで計画を立てるよう示しています。例として、70kgの選手なら1週間に0.3〜0.7kg、1か月で1.2〜2.8kg程度が理想的としています。
またガイドブックによれば、体脂肪1kgを減らすには約9,500kcalのマイナスが必要とされます。同書の計算例では、2.8kgの体脂肪を1か月で減らすなら、体重を維持しているときの食事より1日あたり約900kcalマイナスになるように食事を計画します。これは1か月に2.8kgという上限側の例ですので、全員にそのまま当てはまる数字ではありません。必要な削減量は現在の食事量と練習量で変わります。計画通りに体重や体脂肪が減っているかを定期的に確認し、うまくいかないときは取り組みや計画を見直すことが大切だとされています。
計画の流れは次の通りです。ガイドブックでは、このサイクルをスポーツ栄養士に相談しながら回すことが勧められています。
- 体重・体脂肪率、エネルギーの摂取量と消費量を把握する
- いつまでに何kg減らすか、目標を立てる
- 1日にとるエネルギーと栄養素の量を計画する
- 何をいつ、どのくらい食べるかを決めて実行する
- 計画通りにできているか、目標に近づいているかをチェックし、改善する
減量中の食事のポイント
JISSのガイドブックが示す、ゆっくり減量時の食事のポイントは次の通りです。
- エネルギー消費量よりも少ないエネルギー摂取量にする
- 脂質の少ない食材、肉や魚の部位、調理法を選ぶ
- 主菜や副菜の量は減らさない(たんぱく質、ビタミン、ミネラルは普段通りにとる)
- 主食(炭水化物)を抜かない(疲労回復、練習の質の低下を防ぐ、リバウンド防止のため)
- ジュースや菓子類、アイスクリームなどから砂糖や脂質をとりすぎない
たんぱく質は減らさない
同書は、減量中の除脂肪量の減少を抑えて維持するためには、体重1kgあたり1.6〜2.4gのたんぱく質が必要だと言われているとして、これは日常的にアスリートに推奨されている量と同量だと述べています。主菜の量を減らすのではなく、脂質の少ない食材を選んで低エネルギー・高たんぱく質の主菜にする、という考え方です。たんぱく質は多くとればその分筋肉が増えるわけではなく、とりすぎた分は脂肪になるとも秋田県スポーツ科学センターが指摘しています。サプリメントやプロテインの使い方はアメフト プロテインの摂取タイミングで整理しています。
低エネルギーの素材と調理法を選ぶ
ガイドブックには、素材・調理法・調味料別のエネルギー量の違いが示されています。たとえば肉類では、豚もも、豚ひれ、牛もも、鶏ささみなどは低エネルギー側、豚ばらや牛ばら、ひき肉類などは高エネルギー側に分類されています。調理法では、焼く・茹でる・蒸すが低エネルギー、揚げる調理は高エネルギー側です。調味料でも、ポン酢やレモンは低エネルギー、バターやマヨネーズは高エネルギー側として並んでいます。
補食と菓子類の考え方
洋菓子やアイスクリームは砂糖と脂質が多く体脂肪が蓄積しやすい一方、ようかん・カステラ・まんじゅう・せんべいなどの和菓子は脂質が少なく炭水化物が多いため、減量中でも練習前後の補食に活用できる、とガイドブックは述べています。ジュースは砂糖が多くエネルギーを過剰にとりやすい点にも注意が必要です。
1日の食事例
同書は、1日2,000kcalの減量時の食事例として、体重70kgの選手でエネルギー2,024kcal、たんぱく質113g、脂質38g、炭水化物295gの構成を紹介しています。朝食はごはん200gにハムエッグ・納豆・サラダ・低脂肪牛乳・バナナ、夕食はごはん200gにかれいの煮つけなどです。これはあくまで例であり、アメフトの練習量では不足する場合もあります。この数字をそのまま採用せず、自分の体重と練習量に合わせて栄養士と調整してください。増量側の食事の組み立てはアメフト 増量メニューの食事の組み立て方も参考になります。
体重と体脂肪の測り方
JISSのガイドブックは、体脂肪率の測定方法ごとに得られる値が異なり、いずれも推定値のため、どの方法が正確かはわからないと説明しています。そのうえで、測定誤差を小さくするために次の3点を勧めています。
- 同じ測定方法・同じ機器で測定する
- 測定のタイミングをそろえる(早朝排尿後、練習前など)
- 服装をそろえる
生体電気インピーダンス法の体組成計は、運動後、食後、入浴後、発熱時などには正しく測定できないことがあるとされています。秋田県スポーツ科学センターも、毎回同じ条件で測るよう示しています。体重・体脂肪の数字は日々の変動があるため、1週間単位で傾向を見るのが基本です。
やってはいけない減量と、体のサイン
急速減量・サウナ・脱水
JISSのガイドブックは、過度な急速減量で命を落とした事例が国内外で報告されているとして、無謀な減量を避けるよう明記しています。また一般的に、体重の2%以上の脱水は持久力や認知機能が低下すると言われているため、練習中や試合前に体重が2%以上減少しないようにすることが勧められています。サウナを使った急速減量は、血液が濃縮し全身への酸素供給量が減るとされています。夏場は特に脱水の危険が高まりますので、アメフトの夏合宿の熱中症対策も確認してください。
免疫力の低下
急速減量では、唾液中の免疫成分などが低下し、風邪などの感染症にかかりやすくなるとされています。感染症はチームにも広がるため、減量期は特に感染予防を心がけるよう述べられています。
RED-S(スポーツにおける相対的なエネルギー不足)
JISSのガイドブックによれば、RED-Sとは運動量に見合ったエネルギーが摂取できていない状態のことで、免疫、骨の健康、代謝、心理面などに様々な不調が起こりうると説明されています。以前は女性アスリートの問題と考えられていましたが、男性アスリートにも起こりうるとされています。判断の目安として、利用可能エネルギー(EA)=(総エネルギー摂取量-運動で消費したエネルギー量)÷除脂肪量(kg) が示されており、健康的な人では除脂肪量1kgあたり45kcal以上あると言われています。長期間エネルギー摂取を控えている場合や、気になる症状がある場合は、医師やスポーツ栄養士、トレーナーに相談してください。
体脂肪率を下げすぎない
同書は、体脂肪には生きていくうえで大切な役割があるとして、体重階級制競技の選手では体脂肪率が男性5%、女性12%を下回らないよう注意を促しています。これは体重階級制競技の選手向けの下限の目安であり、アメフト選手の適正値を示すものではありません。体重を絞ること自体を目的にしない姿勢が大切です。
減量中のサプリメントの考え方
JISSのガイドブックは、サプリメントについて「栄養素の過剰摂取」と「ドーピング禁止薬物の混入」が起こりうる問題だとして、本当に必要か、食事の見直しで解決できないか、安全か、を順に確認するフローチャートを示しています。特に除脂肪量の増加をうたう製品は、ステロイド剤などの禁止薬物が含まれているリスクが高いと報告されているとも述べています。日常的な食事の質と量を先に整えるのが基本です。
部の食事環境と費用を確認する
減量でも増量でも、寮や食堂の有無、補食・プロテインの扱いは大学・部によって異なります。費用の目安は大学アメフトの部費・遠征費の相場で整理しています。また、引退後に練習量が急に減る4年生は、同じ食事量を続けると体重が変わりやすいことがあるため、アメフト部 引退後の過ごし方もあわせて参考にしてください。
まとめ
アメフトの減量は、体重ではなく体脂肪を、時間をかけて減らす考え方が基本です。JISSのガイドブックは、体脂肪を減らすゆっくり減量を1週間に体重の0.5〜1%のペースで計画し、主菜・副菜・主食を抜かず、たんぱく質は体重1kgあたり1.6〜2.4gを目安にするとしています。1週間から数日で体重の5%以上を落とす急速減量は、脱水・免疫低下・筋肉量の減少につながるとされ、避けるべき方法です。オフシーズンの時間のあるうちに、体重と体脂肪を同じ条件で測りながら進め、不安があればスポーツ栄養士や医師、トレーナーに相談してください。
参考リンク
- ウエイトコントロールガイドブック|国立スポーツ科学センター(JISS)
- ウエイトコントロールの基本的な考え方|日本スポーツ振興センター
- スポーツ選手のウエイトコントロール(増量)スポーツコラム 令和8年度第1号|秋田県スポーツ科学センター
- KCFA|1部リーグTOP8は8月27日(木)に開幕
- 一般社団法人 関東学生アメリカンフットボール連盟(KCFA)
本記事は、JISSと秋田県スポーツ科学センターの公開資料をもとに、2026年10月時点で編集部が構成した一般的な解説です。JISSのガイドブックは体重階級制競技を主な対象としており、アメフト選手向けの基準ではありません。体質・持病・服薬の状況によって適した食事は異なるため、実際の減量計画は医師・公認スポーツ栄養士・管理栄養士およびチームの指導者に確認してください。
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