怪我と予防 2026-11-05
アメフトの足首捻挫を予防するには|再発させない考え方とテーピング・装具の位置づけ
足首をひねったとき、「いつものことだから」とテーピングを巻いてそのまま練習に戻った経験がある部員は少なくないかもしれません。アメフトは急な方向転換や急停止、人との接触が続く競技で、足首にかかる負荷は小さくありません。この記事では、足関節(足首)の捻挫について、日本語の学術論文や研究の要旨など公開されている資料をもとに、「再発させない」という視点から予防の考え方を整理します。医療行為の代わりになるものではなく、トレーナーや医師に相談する前の基本の整理としてお読みください。
足首の捻挫はなぜ「予防」の対象になるのか
足首の捻挫は、軽く見られがちな怪我です。しかし、公開されているレビュー論文では、繰り返しやすい怪我として扱われています。
日本アスレティックトレーニング学会誌に掲載された篠原純司氏の総説「スポーツ活動における足関節捻挫―後遺症と捻挫再発予防について―」(2018年)の要旨には、次の点が示されています。
- 過去に足関節捻挫を経験していることが、再発の最も強い予測因子とされている
- 再発率は70%を超えると報告されている
- 多くの人は捻挫後に医療機関を受診していない
- 反復する捻挫は、足関節の早期発症型の外傷後変形性関節症のリスクを高めると報告されている
ここから言えるのは、「一度ひねった人は、もう一度ひねりやすい傾向がある」ということと、「受診せずに済ませた場合に後から影響が出る可能性が指摘されている」ということです。必ず再発する、あるいは必ず後遺症が残る、という意味ではありません。ただ、一度の捻挫を「ただの捻挫」で終わらせず、その後の練習の組み方まで含めて考える価値があることは、この資料から読み取れます。
アメフトの練習・試合で足首を痛めやすい場面
足首の捻挫のうち、足の裏が内側を向く形で足首が曲がるタイプは「内反捻挫」と呼ばれます。日本の大学アメフトチームを対象にした研究として、葛原憲治氏らによる「大学アメリカンフットボールチームの下肢傷害分析 ~2年間の前向き研究~」(体力科学 61巻1号、2012年)があります。この研究は関西1部の大学チームを2年間追跡したもので、要旨には次のような内容が示されています。
- 傷害発生率(1000 athlete-exposureあたり)は、試合中が38.3、練習中が13.1で、試合中のほうが有意に高かった
- 下肢の傷害は全傷害の約6割を占めた
- 試合中の足関節の内反捻挫の発生率は3.8で、特に高い値だった
- 接触のない状況での内反捻挫は2.4で、接触の有無で分けた区分の中で最も高い値の一つだった
- 練習中の足関節捻挫の発生率は、米国の大学チームより高かった
注意したいのは、この研究の対象は関西の1部チームであり、本サイトが扱う関東学生連盟(KCFA)のTOP8・BIG8のデータではない点です。数値をそのまま関東の各チームに当てはめることはできません。それでも、「相手との接触がない場面でも足首の捻挫が起こる」「試合中は練習中より傷害の発生率が高い」という傾向は、練習や試合前の準備を考えるうえでの手がかりになります。
具体的に注意したい場面を、編集部が整理すると次のようになります。ここで挙げるのは動作の例であり、これらの場面で必ず捻挫が起こるという意味ではありません。
| 場面 | 起こりやすい状況の例 |
|---|---|
| 切り返し・カット | 外側の足で踏み込んだとき、足首が内側に倒れる |
| ジャンプ後の着地 | パスキャッチの後に他の選手の足の上に着地する |
| タックルボールを持つ相手を、体を使って止めること。攻撃のラインの端に立つ選手の呼び名でもある。用語辞典で見る・ブロック | 踏み込んだ足に相手の体重がかかる、足が絡む |
| 練習の終盤 | 疲れで足の運びが雑になる |
テーピングや装具は予防に役立つのか
「テーピングを巻けば安心」と考える部員は多いのですが、研究の読み方には注意が必要です。
古い資料にはなりますが、足首の靭帯損傷の予防に関するコクラン・レビューを紹介した解説(Pope, Herbert, Maher、Australian Journal of Physiotherapy 1998年)では、次のように整理されています。
- 5件の無作為化試験(参加者は合計3,954人)を対象にしたレビューである
- 5件とも、半硬性の装具(セミリジッドの外側サポーター)、エアキャスト型のブレース、ハイカットシューズなどの外的サポートを検証した
- 外的サポートにより、足首の捻挫は有意に減少した。過去に捻挫をした人でより効果が大きかった
- 傷害の重症度や、足首以外の下肢の傷害には影響しないようにみえた
- バランスボードを使ったトレーニングも同様の効果を示したが、1件の試験のみで、対象も過去に捻挫をした人に限られていた
- ハイカットシューズの効果は不明確で、テーピングを検証した適格な試験は含まれていなかった
つまり、この資料から言えるのは、「装具型のサポーターには予防の根拠が示されている」ことと、「テーピングの予防効果は、このレビューの範囲では検証されていない」ことです。テーピングが役に立たないと断定する意味ではなく、このレビューでは評価できなかったという意味にとどまります。また、この資料は1998年のものと古く、対象競技もアメフトに限られていません。最新の知見や、自分の足首に何が合うかは、トレーナーや整形外科で確認するのが安全です。
テーピング・装具を選ぶときは、次の点も考えておくとよいでしょう。
- すでに捻挫の既往がある足首か、まだない足首か
- ポジションの動き(ステップの多さ、押し合いの多さ)に合うか
- 巻く時間と費用を、練習のたびに続けられるか
- 巻き方が自己流になっていないか(トレーナーや指導者に確認する)
- 固定だけに頼らず、筋力やバランスの練習も続けているか
クリート(スパイク)の選び方も足首の安定性に関わります。アメフト クリート(スパイク)の選び方では、カットの高さやフィット確認を整理していますので、あわせて確認してください。
練習に取り入れたい予防の基本
予防の取り組みは、特別な器具がなくても始められるものがあります。ここでは、公開されている資料で触れられている考え方を、練習に落とし込むときの観点として整理します。
片脚でのバランスを練習に組み込む
前述のレビューで、バランスボードを使ったトレーニングが過去に捻挫をした人で効果を示したとされています。ウォームアップの中で、片脚立ちで姿勢を保つ、不安定な面の上で立つといったバランス練習を取り入れる方法があります。頻度や時間の目安は、チームのトレーナーと相談して決めるのが現実的です。
着地・切り返しの動作を確認する
膝を守る動作の確認と共通する部分が多く、着地で膝とつま先の向きがそろっているか、体幹が傾いていないかを見るのが基本です。膝の怪我の予防については、アメフトの膝の怪我(ACL損傷)を予防する方法で整理しています。
アジリティ練習のあとにも注意する
方向転換を伴う練習は、足首への負荷も大きくなります。種目の選び方はアメフトのアジリティトレーニング種目を参考にしてください。疲れが強い日は量を減らす、地面の状態が悪いときは種目を変えるといった判断も、予防の一部です。
疲労の溜まる時期を把握する
夏合宿やリーグ戦期間は、練習量と試合の連続で疲労が溜まりやすい時期です。夏合宿と熱中症対策や大学アメフト部の練習時間と忙しさの記事も参照し、1週間の中での負荷の置き方を考えてみてください。
捻挫をしたときの対応
予防に取り組んでいても、捻挫が起こることはあります。受傷直後の対応として、長く紹介されてきたのが「RICE」(安静・冷却・圧迫・挙上)です。一方、2019年には英国スポーツ医学誌(BJSM)で、Dubois氏とEsculier氏が「PEACE & LOVE」という考え方を提案しました。編集部が確認できた範囲では、このエディトリアルは、従来の略語が急性期の処置に偏っていたこと、長期間の安静は組織を弱くする可能性があること、早めに負荷を再開する視点が必要なことを論じています。ただし、エディトリアルは意見の表明であり、診療ガイドラインではありません。どの処置が自分の怪我に適しているかは、現場のトレーナーや医師の判断に従ってください。
受傷後の動き方として、最低限、次の点を押さえておくと安心です。
- 痛みをこらえて練習を続けず、トレーナーや指導者にすぐ報告する
- 体重をかけられない、腫れが強い、動かすと強く痛むなどの場合は、整形外科を受診する
- 「軽いから」と受診しないままにしない。総説では、多くの人が受診していないとされており、その後の経過に影響する可能性が指摘されている
- 復帰は、医療者の指示や、トレーナーによる動作の確認を経て段階的に行う
捻挫のあとに可動域やバランス、筋力が元に戻っていないまま試合に戻ると、再発しやすい状態のままになる場合があります。「痛みが引いた」ことと「競技に戻れる状態」は同じではない、と考えておくと判断を誤りにくくなります。
4年生の怪我と引退・就活の時期が重なるとき
足首の怪我が長引くと、4年生の場合は引退時期や就職活動の予定にも影響が出ることがあります。怪我をきっかけに引退を考える場合の就活スケジュールの考え方は、怪我で引退した体育会生の就活スケジュール(ツナカレ就活)で整理されています。復帰を目指すか、区切りをつけるかは、医療者と指導者の意見を聞いたうえで、本人が納得して決めることが大切です。
試合の間隔を確認して、負荷を調整する
関東学生リーグは、秋季リーグ戦で試合が続きます。連戦の時期は、足首の疲労が抜けにくくなる場合があります。今シーズンの対戦カードと試合の間隔は、本サイトの一次データページで確認できます。
- TOP8 日程・結果 ― 試合の間隔と対戦カード
- TOP8 順位表 ― 現在の勝敗・順位
- BIG8 日程・結果 ― BIG8の試合日程
- BIG8 順位表 ― BIG8の勝敗・順位
試合間隔を見ながら、疲労が溜まる週は予防トレーニングの量を調整する、といった使い方ができます。
肩や膝など、他の怪我の予防もあわせて
足首以外の怪我についても、部員が知っておきたい基本を整理しています。アメフトの肩の怪我を予防するには、タックルの正しいフォームと安全な当たり方もあわせて確認し、チーム全体で予防の意識を共有できると、怪我の連鎖を防ぎやすくなります。
まとめ
足首の捻挫は、再発しやすい怪我として公開資料で扱われています。総説では、過去の捻挫経験が再発の最も強い予測因子とされ、再発率は70%を超えると報告されています。大学アメフトチームの研究では、接触のない場面でも内反捻挫が起こり、試合中の発生率が練習中を上回ることが示されています(ただし関西1部チームのデータです)。
テーピングについては、装具型のサポーターに予防の根拠が示される一方、テーピングそのものは古いレビューでは評価されていませんでした。固定に頼りきらず、バランスや着地の練習、疲労の管理、受傷後の受診と段階的な復帰を組み合わせることが現実的です。まずは次の練習で、ウォームアップに片脚立ちのバランス練習を1つ加えること、そして足首に違和感があるときにトレーナーへ早めに伝えることから始めてみてください。
出典・参考
- 篠原純司「スポーツ活動における足関節捻挫―後遺症と捻挫再発予防について―」日本アスレティックトレーニング学会誌 3巻2号(2018年)(J-STAGE)
- 葛原憲治ほか「大学アメリカンフットボールチームの下肢傷害分析 ~2年間の前向き研究~」体力科学 61巻1号(2012年)(J-STAGE)
- Pope R, Herbert R, Maher C. Ankle supports prevent ankle ligament injury during high-risk sporting activities. Australian Journal of Physiotherapy 1998(Macquarie University)
- Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. British Journal of Sports Medicine 2020(PubMed)
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